リテラシーと周囲知 ジェームズ・キャメロン監督の『AVATARアバター』 佐藤清文【電子書籍】[ 批評のロドリゲス出版 ]
ジェームズ・キャメロン監督の『AVATARアバター(Avatar)』(2009年)は映画を根本から変える可能性を秘めている。
と言うのも、それは映画のリテラシーを再考することから始めているからである。
従来の2D映画ではカメラのレンズは一本である。
それを通してみると、対象との距離が失われ、奥行きのない平面と化す。
「映像は坂道を現すのがとても下手です。
カメラで坂を横から撮れれば傾斜がわかりますが、坂を正面から撮ると坂道には見えないのです。
坂を見せようとすれば傾斜を誇張しなければなりません。
望遠レンズで奥行きを圧縮したりして撮ることが多いようです。
私たちがじっさいにそこにいる、という五感もそこにはありません」(小栗康平『映画を見る眼』)。
3D撮影には、2Dで蓄積・形成されてきたこうしたリテラシーが十分に使えないため、衆知によって一から編み出さなければならない。
その一つの成果がこの映画である。
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